「奇特(きとく)な人」は「殊勝で感心な人」「心がけが良い人」という褒め言葉です。「変わった人」「奇妙な人」という意味ではありません。
多くの人が誤解している表現で、使い方を間違えると相手に失礼になることがあります。正しい意味と使い方を理解しておきましょう。
よくある間違い例と正しい使い方
間違った理解と正しい意味
「奇特」を「奇妙」と混同して、「変わった人」という意味で使うのは誤用です。
間違った使い方の例:
- 「彼は奇特な趣味を持っている」(×)
- 「あの人は奇特な性格だ」(×)
- 「奇特な発想をする人だ」(×)
正しい使い方の例:
- 「休日にボランティア活動をするとは奇特な人だ」(○)
- 「若いのに伝統芸能を学ぶとは奇特な心がけだ」(○)
- 「奇特な方のご支援で、プロジェクトが実現しました」(○)
本来の意味での使用
「奇特」は感心するほど殊勝な行いを表す褒め言葉です:
- 人がやらないような善行をする
- 困難なことに真摯に取り組む
- 利益を求めず、純粋な動機で行動する
なぜ間違えやすいのか
「奇」という漢字のイメージ
「奇」という字から、「奇妙」「珍奇」などの言葉を連想し、「変わっている」という意味だと誤解する人が多いのです。
しかし、「奇」には以下の意味もあります:
- 優れている、普通でない
- 珍しい、稀な
- 感心するほど素晴らしい
文化庁の調査結果
文化庁の調査では、約半数の人が「奇妙な」という誤った意味で理解していることが分かっています。つまり、誤用が非常に広まっている表現なのです。
覚え方・使い分けのコツ
「殊勝」に言い換える
迷った場合は、「殊勝(しゅしょう)」という言葉に言い換えて考えましょう:
- 「奇特な行い」=「殊勝な行い」
- どちらも「感心するほど立派」という意味
褒め言葉として使う
「奇特」は必ず褒め言葉、賞賛の表現として使います。批判や皮肉では使いません。
言い換え表現
正しく使う自信がない場合は、以下の明確な表現を使いましょう:
- 「感心な」「殊勝な」「立派な」「心がけの良い」
- 「珍しい」「変わった」という意味なら「特異な」「独特な」を使う
ビジネスシーンでの使用例
社内での評価
「新入社員の田中さんは、誰よりも早く出社して準備をする奇特な人です」
社外への感謝
「このたびは奇特なご支援を賜り、心より感謝申し上げます」
プロジェクトメンバーの紹介
「山田さんは、誰もやりたがらない地道な作業を率先して引き受ける奇特な方です」
よくある質問
Q. 「奇特」の正しい読み方は?
A. 「きとく」と読みます。「きどく」ではありません。
Q. 「奇特」と「奇妙」の違いは?
A. 意味が全く異なります:
- 奇特: 感心なこと、殊勝なこと(褒め言葉)
- 奇妙: 変わっていること、不思議なこと(中立〜やや否定的)
Q. 皮肉として使えますか?
A. 本来は純粋な褒め言葉ですが、文脈によっては「わざわざそんなことをするなんて」というやや皮肉めいたニュアンスで使われることもあります。ただし、基本的には賞賛の表現です。
Q. ビジネス文書で使っても良いですか?
A. 使えますが、やや古風な表現なので、相手によっては現代的な「感心な」「心がけの良い」などを使う方が自然です。
Q. 目上の人に使っても良いですか?
A. 基本的に問題ありませんが、上から目線に聞こえる可能性があるため、注意が必要です。「感心いたしました」など、別の表現の方が無難でしょう。
Q. どのような場面で使うのが適切ですか?
A. 以下のような場面で使うのが適切です:
- 善行や社会貢献を賞賛する時
- 人がやりたがらないことを率先してやる人を評価する時
- 無償の支援や協力に感謝を示す時
まとめ
- 「奇特」は「きとく」と読み、「殊勝な」「感心な」という意味
- 「変わった」「奇妙な」という意味ではない
- 必ず褒め言葉、賞賛の表現として使う
- 約半数の人が誤解している非常に間違えやすい表現
- 迷った場合は「殊勝な」「感心な」「立派な」に言い換える
- ビジネスでは善行や貢献を賞賛する際に使用
- やや古風な表現なので、現代的な言い換えも検討する
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