「この映画、もう見れた?」「昨日、寿司食べれた!」そんな表現、使っていませんか?実はこれは「ら抜き言葉」と呼ばれ、文法的には誤用とされています。しかし現実には多くの人が日常的に使っており、メールや会議でも耳にする機会が増えています。社会人として知っておくべき、ら抜き言葉の問題点と正しい表現を解説します。
ら抜き言葉とは
「ら抜き言葉」とは、可能を表す表現から「ら」を抜いた言い方のことです。文法的には誤りとされていますが、話し言葉では広く使われています。
可能の助動詞「られる」と「れる」
正しい文法では、動詞の可能形は以下のように活用します:
-
上一段動詞・下一段動詞 → 「られる」を付ける
- 見る → 見られる
- 食べる → 食べられる
- 起きる → 起きられる
-
五段動詞 → 「れる」を付ける
- 読む → 読める
- 書く → 書ける
- 走る → 走れる
ら抜き言葉は、本来「られる」とすべきところを「れる」としてしまう誤用です。
よくある間違い例と正しい使い方
間違った使い方(ら抜き言葉)
- × 「この資料、明日までに見れますか?」
- × 「今日は定時で帰れれます」(これは「ら入れ言葉」の誤り)
- × 「その案件、私が対応できれます」
- × 「午前中に来れますか?」
- × 「この機能は誰でも使えれます」
- × 「もう報告書出せれたよ」
正しい使い方
- ○ 「この資料、明日までに見られますか?」
- ○ 「今日は定時で帰れます」
- ○ 「その案件、私が対応できます」
- ○ 「午前中に来られますか?」
- ○ 「この機能は誰でも使えます」
- ○ 「もう報告書出せたよ」
実務での使用例
メールでの表現
件名:会議日程のご確認
山田様
お世話になっております。
来週の会議ですが、以下の日程で
ご参加いただけますでしょうか。
・12月20日(水)14:00-15:00
・12月21日(木)10:00-11:00
ご都合の良い日時を教えていただけると
幸いです。
会議での発言
「このプロジェクトは来月までに
完了できると考えております。
ただし、追加のリソースが確保できれば、
より早く進められると思います」
なぜら抜き言葉が広まったのか
言いやすさの問題
「見られる」と「見れる」を比較すると、「見れる」の方が短く発音しやすいため、話し言葉で自然に広まりました。
可能と受身の区別
「られる」は可能・受身・尊敬・自発の4つの意味を持つため、文脈によって混乱が生じます。
例:「先生に叱られる」(受身) 例:「山が見られる」(可能)
ら抜き言葉を使うと可能の意味だけが明確になるという利点があります。
若い世代の影響
30代以下では「ら抜き言葉」の使用率が50%を超えるという調査結果もあり、世代によって感覚が大きく異なります。
ビジネスシーンでの注意点
公式文書では絶対にNG
履歴書、報告書、提案書などの正式な文書では、ら抜き言葉は使わないのが鉄則です。
悪い例(履歴書):
貴社の業務において、これまでの経験を活かして
貢献できれると考えております。
良い例(履歴書):
貴社の業務において、これまでの経験を活かして
貢献できると考えております。
メールでは相手を見極める
社外への正式なメール、目上の人へのメールでは避けるべきです。社内の同僚や部下とのカジュアルなやり取りでは、状況に応じて判断しましょう。
口頭でも注意が必要
プレゼンテーション、重要な会議、商談などフォーマルな場面では正しい表現を使うことをおすすめします。
覚え方・使い分けのコツ
動詞の種類で判断
上一段・下一段動詞(母音で終わる)かどうかを確認します。
- 「〜る」で終わる動詞 → 大半は「られる」
- 見る、食べる、起きる、着る、借りる
- 「〜う」「〜く」「〜ぐ」「〜す」「〜つ」「〜ぬ」「〜ぶ」「〜む」で終わる動詞 → 「れる」
- 読む → 読める、書く → 書ける
「ら」が必要か迷ったら
「ら」を取った形が不自然に聞こえるか確認します。
- 「来れる」→「来る」が元の形。違和感がある → 「ら」が必要
- 「食べれる」→「食べる」が元の形。違和感がある → 「ら」が必要
- 「読める」→「読む」が元の形。自然 → 「ら」は不要
尊敬語と間違えない
「来られる」は尊敬語としても使われます。可能と尊敬を混同しないように注意しましょう。
- 可能:「私は明日来られます」(来ることができる)
- 尊敬:「部長が明日来られます」(お見えになる)
文脈で判断する必要があります。
よくある質問(FAQ)
Q. 口頭で言う場合もら抜き言葉は避けるべき?
A. フォーマルな場面では避けるべきですが、カジュアルな会話では寛容に捉えられつつあります。ただし、目上の人や取引先との会話では正しい表現を使う方が無難です。社内の同僚同士の日常会話では、状況に応じて判断しましょう。
Q. ら抜き言葉はいずれ正しい日本語として認められる?
A. 文化庁の「国語に関する世論調査」では、ら抜き言葉の使用率が年々増加しています。将来的には許容される可能性もありますが、現時点では文法的に誤りとされています。ビジネスシーンでは保守的な姿勢を取る方が安全です。
Q. 「帰れれる」という二重の誤用も聞くけど、これは何?
A. これは「ら入れ言葉」と呼ばれる別の誤用です。本来「帰れる」(五段動詞の可能形)で正しいのに、「帰れられる」「帰れれる」と不要な「ら」を入れてしまう間違いです。ら抜き言葉を避けようとして逆に間違えるケースです。
Q. 履歴書の自己PR欄でら抜き言葉を使ってしまった。やり直すべき?
A. できればやり直すことをおすすめします。履歴書は正式な文書であり、日本語の正確さも評価の対象になる可能性があります。特に文章作成能力が求められる職種では、ら抜き言葉は減点要因になりかねません。
Q. 「見られる」と「見れる」、実際にはどちらが多く使われている?
A. 話し言葉では「見れる」の使用率が高く、特に若い世代では過半数を超えています。一方、書き言葉やフォーマルな場面では「見られる」が圧倒的に多く使われます。場面によって使い分けが必要です。
まとめ
- ら抜き言葉は文法的には誤りだが、話し言葉では広く使われている
- 正しい可能形:「見る」→「見られる」、「食べる」→「食べられる」
- ビジネス文書、履歴書、正式なメールでは絶対に避ける
- プレゼンや重要な会議でも正しい表現を使う
- 上一段・下一段動詞(〜る)には「られる」を付ける
- 五段動詞には「れる」を付ける(ら抜きではない)
- カジュアルな会話では寛容だが、目上の人には正しい表現を
ら抜き言葉は便利で言いやすい反面、教養や日本語力を疑われるリスクがあります。特にビジネスシーンでは、正しい日本語を使うことで信頼感を高められます。普段から意識して正しい表現を使う習慣をつけましょう。
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