「お帰りになられる」は二重敬語であり、正しくは「お帰りになる」です。敬語を重ねすぎると、かえって不自然で過剰な印象を与えます。
ビジネスシーンでは、丁寧にしようとして敬語を重ねてしまう誤りが頻繁に見られます。シンプルで美しい敬語の使い方を理解しましょう。
よくある間違い例と正しい使い方
二重敬語の問題
「お帰りになられる」は、敬語が重複している誤った表現です:
間違った使い方:
- 「社長はお帰りになられましたか?」(×)
- 「お客様はお帰りになられますか?」(×)
- 「先生はお帰りになられるでしょうか?」(×)
正しい使い方:
- 「社長はお帰りになりましたか?」(○)
- 「お客様はお帰りになりますか?」(○)
- 「先生はお帰りになるでしょうか?」(○)
なぜ二重敬語なのか
「お帰りになられる」には、以下の敬語が重複しています:
- 「お〜になる」 = 尊敬の表現
- 「〜られる」 = 尊敬の助動詞
つまり、2つの尊敬表現が重なっているのです。
正しい敬語表現
「帰る」の尊敬語
「帰る」を尊敬語にする方法を整理しましょう:
正しい尊敬語:
- 「お帰りになる」(○)- 最も自然
- 「帰られる」(○)- やや硬い
- 「お戻りになる」(○)- 職場などで使用
間違った表現:
- 「お帰りになられる」(×)- 二重敬語
使い分けの例
お客様の退出時:
- 「お客様はお帰りになりましたか?」(○)
- 「お客様はお戻りになりましたか?」(○)
上司の外出から戻る場合:
- 「部長はお戻りになりましたか?」(○)
- 「部長はお帰りになりましたか?」(○)
覚え方・使い分けのコツ
「お〜になる」だけで十分
「お〜になる」は、それ自体が完成された尊敬表現です:
- 「お帰りになる」
- 「お越しになる」
- 「お読みになる」
- 「お書きになる」
これに「られる」を追加する必要はありません。
「られる」を安易につけない
丁寧にしようとして「られる」を付けたくなりますが、「お〜になる」がすでに尊敬語なので不要です:
「お〜になる」で完結 = 「られる」は不要
ビジネスシーンでの使用例
受付・接客の場面
お客様の退出時: 「お忙しいところご来社いただき、ありがとうございました。お気をつけてお帰りください」
確認の場合: 「お客様は何時頃お帰りになりますか?」
社内でのコミュニケーション
上司の予定確認: 「部長は何時頃お戻りになりますか?」
電話対応: 「申し訳ございません。担当者は外出しており、3時頃にお戻りになる予定です」
類似の二重敬語に注意
「お〜になられる」のパターン
同じパターンの二重敬語は多く見られます:
間違った表現:
- 「お越しになられる」(×) → 「お越しになる」「いらっしゃる」(○)
- 「お読みになられる」(×) → 「お読みになる」(○)
- 「お書きになられる」(×) → 「お書きになる」(○)
- 「お聞きになられる」(×) → 「お聞きになる」(○)
尊敬語+「られる」の間違い
元々尊敬語の動詞に「られる」を付ける誤りも多いです:
間違った表現:
- 「いらっしゃられる」(×) → 「いらっしゃる」(○)
- 「おっしゃられる」(×) → 「おっしゃる」(○)
- 「召し上がられる」(×) → 「召し上がる」(○)
よくある質問
Q. なぜ二重敬語を使ってしまうのですか?
A. より丁寧にしようという気持ちから、敬語を重ねてしまいます。しかし、敬語は重ねすぎるとかえって不自然です。シンプルな方が美しい日本語です。
Q. 「帰られる」は正しいですか?
A. はい、文法的には正しい尊敬語です。ただし、「お帰りになる」の方がより自然で柔らかい印象を与えます。
Q. 「お戻りになる」と「お帰りになる」の違いは?
A. ニュアンスが異なります:
- 「お帰りになる」: 家に帰る、退出する
- 「お戻りになる」: 元の場所に戻る(職場、会議など)
Q. 顧客や上司にはどちらが適切ですか?
A. 以下のように使い分けましょう:
- 退出する場合: 「お帰りになる」
- 職場に戻る場合: 「お戻りになる」
- より丁寧に: 「お帰りください」「お戻りください」
Q. 「帰られます」は二重敬語ですか?
A. いいえ、二重敬語ではありません。「帰る」+「られる(尊敬の助動詞)」という形で、正しい尊敬語です。ただし、「お帰りになる」の方が自然です。
Q. 二重敬語を指摘するのは失礼ですか?
A. 状況によります。親しい間柄なら指摘しても良いですが、お客様や目上の人には指摘しない方が無難です。自分が使わないよう気をつけることが重要です。
まとめ
- 「お帰りになられる」は二重敬語で誤り
- 正しくは「お帰りになる」
- 「お〜になる」だけで完成された尊敬語
- 「られる」を追加する必要はない
- 「お越しになられる」「お読みになられる」も同様の誤り
- 敬語は重ねすぎず、シンプルに使う方が美しい
- ビジネスでは「お帰りになる」「お戻りになる」を使い分ける
- 丁寧にしようとして敬語を重ねすぎないよう注意
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