「ご利用できます」は不適切な表現で、正しくは「ご利用になれます」または「ご利用いただけます」です。「ご〜できる」という形は、尊敬語と可能表現が混在した誤った使い方です。
ビジネスシーンでは、お客様への案内や説明で頻繁に使われる表現ですが、誤用が非常に多く見られます。
よくある間違い例と正しい使い方
「ご利用できます」の誤り
「ご利用できます」は、尊敬語の形式「ご〜」と可能表現「できる」が不適切に組み合わさっています:
間違った使い方:
- 「こちらのサービスはご利用できます」(×)
- 「お客様はこの機能をご利用できます」(×)
- 「会員様はご利用できます」(×)
正しい使い方:
- 「こちらのサービスはご利用になれます」(○)
- 「お客様はこの機能をご利用いただけます」(○)
- 「会員様はご利用いただけます」(○)
- 「こちらのサービスは利用できます」(○ 敬語を使わない場合)
なぜ間違いなのか
「ご〜できる」という形は、以下の問題があります:
- 「ご〜」 = 尊敬語の接頭辞(相手の行為を高める)
- 「できる」 = 可能表現(自分ができるかどうかを表す)
この2つが混在すると、誰の行為なのか曖昧になり、不適切な表現となります。
正しい敬語表現
「利用できる」の正しい敬語変換
相手が利用できることを伝える場合、以下の表現を使います:
尊敬語(相手の行為):
- 「ご利用になれます」(○)
- 「ご利用いただけます」(○)
丁寧語(敬語を使わない):
- 「利用できます」(○)
使い分けの例
お客様への案内:
- 「こちらのサービスはご利用いただけます」(○)
- 「会員様は全ての機能をご利用になれます」(○)
社内での説明:
- 「新システムは来月から利用できます」(○)
覚え方・使い分けのコツ
「ご〜になれる」または「ご〜いただける」
可能表現を敬語にする場合の基本パターンを覚えましょう:
可能表現の尊敬語:
- 「ご〜になれる」 = 尊敬語の可能形
- 「ご〜いただける」 = 謙譲語的な可能形(より丁寧)
主語で判断する
誰ができるのかで表現を使い分けます:
- お客様・相手ができる → 「ご利用になれます」「ご利用いただけます」
- 自分・会社ができる → 「利用できます」「ご提供できます」
ビジネスシーンでの使用例
お客様への案内
サービス説明: 「こちらのプランでは、全ての機能をご利用いただけます」
施設案内: 「ラウンジは午前10時からご利用になれます」
ウェブサイトの表示
機能説明: 「会員登録いただくと、プレミアム機能をご利用いただけます」
利用条件: 「18歳以上の方がご利用になれます」
類似の誤用に注意
「ご覧できます」の誤り
同じパターンの誤用は多く見られます:
間違った表現:
- 「こちらをご覧できます」(×)
正しい表現:
- 「こちらをご覧になれます」(○)
- 「こちらをご覧いただけます」(○)
「ご確認できます」の誤り
間違った表現:
- 「資料をご確認できます」(×)
正しい表現:
- 「資料をご確認いただけます」(○)
- 「資料をご確認になれます」(○)
「ご参加できます」の誤り
間違った表現:
- 「イベントにご参加できます」(×)
正しい表現:
- 「イベントにご参加いただけます」(○)
- 「イベントにご参加になれます」(○)
よくある質問
Q. 「ご利用できます」はなぜ広まったのですか?
A. 簡潔で分かりやすいため、口語的に広まりました。しかし、文法的には正しくないため、正式な場面では避けるべきです。
Q. 「ご利用になれます」と「ご利用いただけます」の違いは?
A. ニュアンスが異なります:
- 「ご利用になれます」: 純粋な尊敬語(相手の行為を高める)
- 「ご利用いただけます」: 謙譲語的な表現(相手に恩恵を受ける形)
どちらも正しいですが、「ご利用いただけます」の方がより丁寧な印象を与えます。
Q. 敬語を使わない場合は?
A. 「利用できます」と普通に言えば問題ありません: 「このサービスは無料で利用できます」(○)
Q. ウェブサイトやアプリの表示ではどうすべきですか?
A. 以下のように使い分けましょう:
- お客様向け: 「ご利用いただけます」
- 一般説明: 「利用できます」
- 機能説明: 「使用できます」
Q. 「お使いできます」は正しいですか?
A. いいえ、同じく誤りです。正しくは:
- 「お使いになれます」(○)
- 「お使いいただけます」(○)
Q. 間違いを指摘されたらどう対応しますか?
A. 素直に認めて訂正しましょう: 「失礼いたしました。ご利用いただけます、の方が適切ですね」
まとめ
- 「ご利用できます」は不適切な表現
- 正しくは「ご利用になれます」または「ご利用いただけます」
- 「ご〜できる」という形は尊敬語と可能表現が混在した誤用
- 「ご〜になれる」または「ご〜いただける」が正しい形
- 「ご覧できます」「ご確認できます」も同様の誤り
- お客様への案内では「ご利用いただけます」が最も丁寧
- 敬語を使わない場合は「利用できます」でOK
- ビジネス文書やウェブサイトでは正しい敬語を使用
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