「申される」は間違った敬語表現です。正しくは「おっしゃる」または「申し上げる」を使います。「申す」は謙譲語なので、尊敬語として使うことはできません。
ビジネスシーンで敬語の種類を取り違えると、相手に失礼な印象を与えることがあります。正しい敬語の使い分けを理解しましょう。
よくある間違い例と正しい使い方
「申される」の誤り
「申される」は、謙譲語に尊敬の助動詞「られる」をつけた誤った表現です:
間違った使い方:
- 「社長が申されたとおりです」(×)
- 「先生が申されたことは正しい」(×)
- 「お客様が申されるには」(×)
正しい使い方:
- 「社長がおっしゃったとおりです」(○)
- 「先生がおっしゃったことは正しい」(○)
- 「お客様がおっしゃるには」(○)
なぜ間違いなのか
敬語には3つの種類があります:
- 尊敬語: 相手の行為を高める(おっしゃる、いらっしゃる)
- 謙譲語: 自分の行為をへりくだる(申す、伺う)
- 丁寧語: 丁寧に述べる(です、ます)
「申す」は謙譲語なので、相手の行為には使えません。
正しい敬語表現
「言う」の敬語変換
「言う」を敬語にする方法を整理しましょう:
尊敬語(相手の行為):
- 「おっしゃる」(○)
- 「言われる」(△ やや硬い)
謙譲語(自分の行為):
- 「申す」(○)
- 「申し上げる」(○)
丁寧語:
- 「言います」(○)
使い分けの例
相手が言う場合:
- 「社長がおっしゃいました」(○)
- 「先生がおっしゃるとおりです」(○)
自分が言う場合:
- 「私が申し上げます」(○)
- 「先ほど申したとおりです」(○)
覚え方・使い分けのコツ
主語で判断する
誰の行為かで敬語を使い分けましょう:
- 相手・目上の人の行為 → 尊敬語(おっしゃる)
- 自分・身内の行為 → 謙譲語(申す、申し上げる)
「申す」を使う場面
自分や身内について謙遜する場合に使います:
- 自己紹介: 「田中と申します」
- 伝言: 「部長が明日伺うと申しておりました」
- 謙遜: 「先ほど申し上げたとおりです」
ビジネスシーンでの使用例
会議での発言
間違い: 「部長が申されたプランについて検討します」(×)
正しい: 「部長がおっしゃったプランについて検討します」(○)
メールでの報告
間違い: 「お客様が申された要件は以下のとおりです」(×)
正しい: 「お客様がおっしゃった要件は以下のとおりです」(○)
電話対応
間違い: 「先方が申されるには、明日でも構わないとのことです」(×)
正しい: 「先方がおっしゃるには、明日でも構わないとのことです」(○)
類似の誤用に注意
「伺われる」の誤り
「伺う」も謙譲語なので、尊敬語にはできません:
間違った表現:
- 「社長が伺われます」(×)
正しい表現:
- 「社長がいらっしゃいます」(○)
- 「社長がお越しになります」(○)
「いたされる」の誤り
「いたす」も謙譲語です:
間違った表現:
- 「部長がいたされました」(×)
正しい表現:
- 「部長がなさいました」(○)
- 「部長がされました」(○)
よくある質問
Q. なぜ「申される」を使う人が多いのですか?
A. 「られる」をつければ尊敬語になると誤解しているためです。しかし、元の動詞が謙譲語の場合は、尊敬語にはなりません。
Q. 「おっしゃられる」は正しいですか?
A. 文法的には二重敬語ですが、実際には使われることもあります。ただし、「おっしゃる」だけで十分です。
Q. 自分について「申される」は使えますか?
A. いいえ、自分について使う場合でも「申す」「申し上げる」を使います。
Q. 「申す」と「申し上げる」の違いは?
A. 丁寧さの程度が異なります:
- 申す: 基本的な謙譲語
- 申し上げる: より丁寧な謙譲語
Q. 身内の行為を外部の人に説明する場合は?
A. 身内の行為は謙譲語を使います: 「部長が申しておりました」(○) 「部長がおっしゃっていました」(× 身内に尊敬語は使わない)
Q. 敬語を間違えて使ってしまったら?
A. 気づいたら訂正しましょう: 「失礼いたしました。社長がおっしゃったとおりです」
まとめ
- 「申される」は間違った敬語表現
- 「申す」は謙譲語なので、相手の行為には使えない
- 正しくは「おっしゃる」(尊敬語)を使う
- 尊敬語は相手の行為、謙譲語は自分の行為に使う
- 「伺われる」「いたされる」も同様の誤り
- 主語が誰かで敬語の種類を使い分ける
- ビジネスでは敬語の種類を正しく使い分けることが重要
- 身内の行為を外部に説明する際は謙譲語を使う
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