「ご確認いただけますでしょうか」「お送りいただけますでしょうか」というメール表現、丁寧に聞こえますが、実はこれ、文法的には誤りです。「いただけます」と「でしょうか」を組み合わせた二重敬語であり、過剰な丁寧表現として避けるべき言い方とされています。ビジネスメールで頻繁に使われる表現ですが、正しい敬語を知っておくことで、より洗練された印象を与えられます。
「いただけますでしょうか」が誤用とされる理由
二重敬語の構造
「いただけますでしょうか」は、敬語が二重に重なっているため、文法的には不適切とされます。
- 「いただけます」:「いただく(謙譲語)」+「ます(丁寧語)」
- 「でしょうか」:「です(丁寧語)」+「う(推量)」+「か(疑問)」
つまり、「ます」と「です」という二つの丁寧語が重複しているのです。
過剰な丁寧さが違和感を生む
日本語では、丁寧すぎる表現はかえって不自然に聞こえることがあります。相手に対して敬意を示そうとするあまり、言葉が冗長になり、かえってぎこちない印象を与えてしまうのです。
「いただけますでしょうか」は、まさにその典型例です。「丁寧に言おうとしすぎている」という印象を与え、相手に過度なへりくだりや不自然さを感じさせる可能性があります。
よくある間違い例と正しい使い方
間違った使い方
メールでの依頼
- × 「資料をご確認いただけますでしょうか」
- × 「明日までにご返信いただけますでしょうか」
- × 「ご検討いただけますでしょうか」
電話や対面での依頼
- × 「お時間をいただけますでしょうか」
- × 「ご意見をお聞かせいただけますでしょうか」
- × 「お名前を教えていただけますでしょうか」
会議やプレゼンでの確認
- × 「この内容でよろしいでしょうかという点を、ご確認いただけますでしょうか」
- × 「追加のご質問をいただけますでしょうか」
正しい使い方
メールでの依頼
- ○ 「資料をご確認いただけますか」
- ○ 「明日までにご返信いただけますでしょうか」→「明日までにご返信いただけますか」
- ○ 「ご検討いただけますか」
- ○ 「資料をご確認いただければ幸いです」(さらに丁寧な表現)
電話や対面での依頼
- ○ 「お時間をいただけますか」
- ○ 「ご意見をお聞かせいただけますか」
- ○ 「お名前を教えていただけますか」
- ○ 「少々お時間をいただけますでしょうか」→「少々お時間をいただけますか」
会議やプレゼンでの確認
- ○ 「この内容でご確認いただけますか」
- ○ 「追加のご質問はございますか」
- ○ 「ご意見をお聞かせいただけますか」
正しい表現パターン
パターン1:「いただけますか」
最もシンプルで適切な表現です。
- 「ご確認いただけますか」
- 「ご検討いただけますか」
- 「お送りいただけますか」
パターン2:「いただけるでしょうか」
「ます」を「る」に変えることで、二重敬語を回避できます。
- 「ご確認いただけるでしょうか」
- 「ご検討いただけるでしょうか」
- 「お送りいただけるでしょうか」
この形は、「いただけますか」よりもやや丁寧な印象を与えます。重要な依頼や目上の方へのメールで使うとよいでしょう。
パターン3:「いただければ幸いです」
最も丁寧でやわらかい表現です。
- 「ご確認いただければ幸いです」
- 「ご検討いただければ幸いです」
- 「お送りいただければ幸いです」
依頼というよりもお願いのニュアンスが強く、相手に配慮した印象を与えます。
パターン4:「いただきたく存じます」
謙譲語を用いた格式高い表現です。
- 「ご確認いただきたく存じます」
- 「ご検討いただきたく存じます」
- 「お送りいただきたく存じます」
重要な取引先や社外の方への正式な依頼に適しています。
なぜ「いただけますでしょうか」が広まったのか
丁寧さへの過剰な意識
日本のビジネス文化では、相手への敬意を最大限に示すことが重視されます。そのため、「できるだけ丁寧に」という意識が強く働き、敬語を重ねる表現が生まれました。
口語での定着
文法的には誤りでも、実際の会話で広く使われているため、違和感なく受け入れられています。特に若手社員が先輩や上司に対して使う場面で多く見られます。
「でしょうか」の柔らかい響き
「ですか」よりも「でしょうか」の方が柔らかく丁寧に聞こえるため、自然と「いただけますでしょうか」という組み合わせが好まれるようになりました。
覚え方・使い分けのコツ
「ます」と「です」を同時に使わない
「いただけ【ます】【です】か」という構造を意識しましょう。「ます」と「です」が同時に入っている場合は、どちらかを外す必要があります。
- 「いただけ【ます】か」→ ○
- 「いただけ【る】【です】か」→ 「いただけるでしょうか」→ ○
- 「いただけ【ます】【です】か」→ × 二重敬語
シーンに応じて使い分ける
相手や状況に応じて適切な表現を選ぶことが大切です。
- 社内の同僚・後輩:「確認してもらえますか」「確認してもらえる?」
- 社内の上司:「ご確認いただけますか」
- 取引先・顧客:「ご確認いただけるでしょうか」「ご確認いただければ幸いです」
- 重要な取引先:「ご確認いただきたく存じます」
言い換え表現を活用する
同じ表現を繰り返さず、バリエーションを持たせることで、洗練された印象を与えられます。
- 「ご確認いただけますか」
- 「ご確認くださいますようお願いいたします」
- 「ご確認のほどよろしくお願いいたします」
- 「ご確認いただければ幸いです」
よくある質問(FAQ)
Q. 「いただけますでしょうか」は絶対に使ってはいけないのですか?
A. 絶対に使ってはいけないわけではありません。実際のビジネスシーンでは広く使われており、多くの人が違和感なく受け入れています。ただし、文法的には誤りであることを理解した上で、より正しい表現を選ぶことができれば、より洗練された印象を与えられます。
Q. 「いただけますか」と「いただけるでしょうか」はどちらが丁寧ですか?
A. 「いただけるでしょうか」の方がやや丁寧です。「でしょうか」は推量を表すため、断定を避けた柔らかい表現になります。重要な依頼や目上の方へのメールでは「いただけるでしょうか」を使うとよいでしょう。
Q. 「くださいますでしょうか」も誤りですか?
A. はい、同じく二重敬語です。「くださいますか」または「くださるでしょうか」が正しい表現です。
- × 「ご確認くださいますでしょうか」
- ○ 「ご確認くださいますか」
- ○ 「ご確認くださるでしょうか」
Q. 上司に「いただけますでしょうか」と言われました。指摘すべきですか?
A. 指摘しない方が無難です。実際のビジネスシーンでは広く使われており、指摘することで相手を不快にさせる可能性があります。自分自身は正しい表現を使うように心がけ、他人の言葉遣いには寛容でいるのが賢明です。
Q. 英語で「いただけますでしょうか」に相当する表現は?
A. "Could you please...?" や "Would you mind...?" が近い表現です。英語でも過度に丁寧な表現(例:"Could you possibly be able to...")は不自然に聞こえるため、シンプルな表現が好まれます。
Q. メールの締めくくりで使える代替表現はありますか?
A. 以下の表現が便利です。
- 「ご確認のほどよろしくお願いいたします」
- 「何卒よろしくお願い申し上げます」
- 「ご検討いただけますと幸いです」
- 「お忙しいところ恐縮ですが、よろしくお願いいたします」
まとめ
- 「いただけますでしょうか」は「ます」と「です」が重複した二重敬語で文法的には誤り
- 正しくは「いただけますか」または「いただけるでしょうか」
- 「いただければ幸いです」や「いただきたく存じます」も丁寧な代替表現
- 実際のビジネスシーンでは広く使われているため、他人の使用には寛容に
- 相手や状況に応じて適切な表現を選ぶことが大切
- 同じ表現を繰り返さず、言い換えのバリエーションを持つと洗練された印象に
次回メールを書くときは、「いただけますか」や「いただけるでしょうか」を意識してみてください。シンプルで正しい敬語が、あなたのビジネスコミュニケーションをより洗練されたものにしてくれるはずです。
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