「その意見は的を射ている」「その意見は的を得ている」どちらが正しい表現でしょうか?長年議論されてきたこの問題、実は両方とも使われるようになっていますが、本来の正しい表現と使い分けのポイントを理解しておくことが重要です。
本来の正しい表現は「的を射る」
伝統的には「的を射る(まとをいる)」が正しいとされてきました。弓道で的に矢を射ることから、「要点を正確に捉える」という意味を表します。
「得る」は「獲得する」という意味で、的を獲得するという表現は成り立たないため、「的を得る」は誤りとされてきました。
「的を得る」も認められつつある
しかし、現代では「的を得る」も慣用表現として使われるようになっています。
その理由は:
- 「当を得る(とうをえる)」という正しい表現との混同
- 「的を得る」の方が意味が理解しやすい
- 実際に多くの人が「的を得る」を使用している
辞書によっては「的を得る」も容認する記述が見られるようになりました。
よくある間違い例と正しい使い方
本来の正しい表現
- ○ 「その指摘は的を射ている」(要点を捉えている)
- ○ 「的を射たアドバイスをありがとうございます」
- ○ 「彼の分析は的を射ている」
現代で使われる表現
- ○ 「その意見は的を得ている」(慣用表現として定着)
- △ 「的を得た提案だと思います」(使用されているが、本来は誤り)
正しい類似表現
- ○ 「当を得た意見」(正しい表現)
- ○ 「正鵠を射る(せいこくをいる)」(的の中心を射る)
- ○ 「要を得た説明」(要点を押さえた)
覚え方・使い分けのコツ
ビジネスシーンでは「的を射る」を使うのが安全です。
判断基準
正式な場面・年配の方との会話
- 「的を射る」を使う
- 本来の正しい表現として認識されている
- 教養をアピールできる
カジュアルな場面
- 「的を得る」でも理解される
- ただし、正しいとは限らない
書類・報告書
- 「的を射る」が無難
- 誤りを指摘されるリスクがない
混同しやすい表現
- 的を射る = 要点を捉える(正しい)
- 当を得る = 道理にかなう(正しい)
- 的を得る = 混同による誤用(ただし定着しつつある)
「当を得る」という正しい表現があるため、「的を得る」も正しいと誤解されやすいのです。
よくある質問(FAQ)
Q. 「的を得る」は完全に間違い?
A. 伝統的には誤りですが、現代では慣用表現として認められつつあります。ただし、ビジネスシーンでは「的を射る」を使う方が安全です。
Q. なぜ「的を得る」が広まったのか?
A. 「当を得る」という正しい表現との混同、および「得る」の方が直感的に理解しやすいためです。また、「射る」という言葉が日常であまり使われないことも影響しています。
Q. 履歴書やエントリーシートではどちらを使うべき?
A. 「的を射る」を使いましょう。採用担当者が正しい日本語に詳しい場合、「的を得る」は誤りと判断される可能性があります。
Q. メールや報告書ではどちらが良い?
A. ビジネス文書では「的を射る」を使うことをお勧めします。誤解や指摘を受けるリスクを避けられます。
Q. 「正鵠を射る」とは?
A. 「せいこくをいる」と読み、「的の中心を射る」という意味です。「的を射る」と同じ意味で使えますが、やや古風な表現です。
まとめ
- 本来の正しい表現は「的を射る」
- 「的を得る」は誤用だが、現代では使われることもある
- ビジネスシーンでは「的を射る」を使うのが安全
- 「当を得る」も正しい表現だが、意味が異なる
- 正式な場面では伝統的な表現を使う方が無難
正しい日本語を使うことで、ビジネスパーソンとしての信頼性が高まります。「的を射る」を正しく使いこなしましょう。
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