「資料をご覧になりましたか?」「資料を拝見しました」という表現、正しく使い分けられていますか?「ご覧になる」と「拝見する」は、尊敬語と謙譲語という全く逆の敬語です。混同すると相手に失礼な印象を与えてしまいます。
「ご覧になる」と「拝見する」の違い
「ご覧になる」は尊敬語
「ご覧になる」は、相手の動作を敬って表現する尊敬語です。
- 「見る」の尊敬語
- 相手(目上の人)が見る場合に使う
- 主語は相手(目上の人)
「拝見する」は謙譲語
「拝見する」は、自分の動作をへりくだって表現する謙譲語です。
- 「見る」の謙譲語
- 自分が見る場合に使う
- 主語は自分(または身内)
よくある間違い例と正しい使い方
混同による誤用
- × 「お客様が資料を拝見する」(お客様に対して謙譲語を使っている)
- × 「私が資料をご覧になる」(自分に対して尊敬語を使っている)
正しい使い方(ご覧になる)
- ○ 「資料をご覧になりましたか?」(相手が見たか尋ねる)
- ○ 「お客様がご覧になった資料」(お客様が見た)
- ○ 「こちらをご覧ください」(相手に見てもらう)
正しい使い方(拝見する)
- ○ 「資料を拝見しました」(自分が見た)
- ○ 「先日拝見した書類について」(自分が見た)
- ○ 「拝見させていただきます」(自分が見る)
覚え方・使い分けのコツ
主語が誰かを考えれば、間違えることはありません。
判断基準
相手(目上の人)が見る場合
- 「ご覧になる」を使う
- 「部長がご覧になる」
- 「お客様にご覧いただく」
自分(または身内)が見る場合
- 「拝見する」を使う
- 「私が拝見する」
- 「弊社で拝見します」
敬語の基本整理
| 基本形 | 謙譲語(自分) | 尊敬語(相手) |
|---|---|---|
| 見る | 拝見する | ご覧になる |
| 言う | 申し上げる | おっしゃる |
| 聞く | 伺う | お聞きになる |
| 行く | 伺う/参る | いらっしゃる |
| 食べる | いただく | 召し上がる |
よくある質問(FAQ)
Q. 「拝見させていただく」は二重敬語?
A. 厳密には「させていただく」が過剰な表現ですが、ビジネスマナーとして広く使われています。「拝見いたします」の方がシンプルで適切です。
Q. 「ご覧いただく」は正しい?
A. はい、正しい表現です。「いただく」は謙譲語なので、「相手にご覧いただく(見てもらう)」という意味で使えます。
Q. メールで「ご拝見ください」は間違い?
A. はい、間違いです。「拝見」は謙譲語なので、「ご」を付けて相手に使うことはできません。「ご覧ください」が正しい表現です。
Q. 「見る」をそのまま使ってはダメ?
A. ビジネスシーンでは、敬語を使う方が適切です。ただし、カジュアルな場面では「見る」「見てください」でも問題ありません。
Q. 「お目通し」という表現は?
A. 「お目通し(おめとおし)」は、目を通す(ざっと見る)の丁寧な表現です。「お目通しいただく」のように使います。
まとめ
- 「ご覧になる」は尊敬語(相手が見る)
- 「拝見する」は謙譲語(自分が見る)
- 主語が誰かを考えれば間違えない
- 「ご拝見」という表現は存在しない
- 混同すると失礼な印象を与える
正しい敬語を使うことで、ビジネスシーンでの信頼性が高まります。「ご覧になる」と「拝見する」を正しく使い分けましょう。
この記事をシェア